地上の民族のはじまり①

はじめに

創世記9章までの聖書の流れから、ノアの子どもは三人。長男がセム。次男はハム。そして末の子がヤペテだということを確認しました。ところが10章でのノアの子どもたちの子孫の説明ではノアの三人の子どもたちを取り上げる順序が逆転しています。また本日取り上げるヤペテの子孫では部分的に子孫を飛ばして取り上げています。次回ハムの子孫を取り上げる時はハムの4番目の息子カナンの子孫だけを段落を変えて強調しています。聖書全体では長男を重視する傾向がありますが、系図においては別の基準がしばしば用いられています。読者にそれを考えさせ、聖書の著者である神様にその答え(真理)を祈り求めるように促しているかのようです。今回の箇所も単なる系図としてではなく、これまでの箇所同様に神様が示そうとしておられる重要な真理に関心を向けながらみことばに聴いていきましょう。

テモテへの第二の手紙3章16節に「聖書は、すべて神の霊感を受けて書かれたものであって、人を教え、戒め、正しくし、義に導くのに有益である。」とある通りに。

ヤペテの子孫を生まれた順に整理するために番号を振るので参考にして下さい。

なお、文中の太字は聖書本文だということ表しています。

ノアの末の子ヤペテの子孫

創世記10章1-5節(10p)

1節 ノアの子セム、ハム、ヤペテの系図は次のとおりである。洪水の後、彼らに子が生れた

2 節 ヤペテ(名前の意味は「広がる」)の子孫は

①ゴメル(残り火)始めはトルコ中央、後に黒海の北・ウクライナ・ロシア方面へ広がる

②マゴグ(意味は不明)中心都市はゴグ。黒海南のトルコ西端、その後ヨーロッパ全域へ

③マダイ(別名メディア)初めはカスピ海南=現在のイラン領(やがてインド・アジアへ?)

④ヤワン(ヘブライ語ではギリシャ)、ギリシャ半島へ…ギリシャ神話の神々を生みだした民族?

⑤トバル(騒ぎ)地中海最東キリキヤ地方、パウロの出身地とされるタルソ付近

⑥メセク(引き伸ばれた)やがてフランス・スペイン方面へ

⑦テラス(あこがれ)イタリヤ方面へ(やがてはローマ帝国へ?)。…であった

3節 ①ゴメルの子孫は

⑧アシケナズ(不明)トルコ・イラク・イランの三つの国境=黒海とカスピ海の中間

⑨リパテ(話された)黒海下西

⑩トガルマ(やせた)黒海下東

4節 ④ヤワンの子孫は

⑪エリシャ(神は救いである)トルコ寄りのシリア

⑫タルシシ(金色の石)トルコ西・ガラテヤ地方、鉱物資源に恵まれ、貿易で栄えた

⑬キッテム(不明)地中海のキプロス島・トルコの南方

⑭ドダニム(別名ロダニム)場所は不明…であった

5節 これらから海沿いの地の国民が分れて、おのおのその土地におり、その言語にしたがい、

その氏族にしたがって、その国々に住んだ

ヤペテ=広がるの名の通りに

今回取り上げた名前については元西南学院大学神学部の旧約学教授であった関谷定夫監修・ジョアン・コメイ著の『旧約聖書人名辞典』を参考にした。場所については主に日本聖書協会のバイブルアトラスを参考にした。
それでも、これがどれだけ正確かは疑問が残る。一つの参考にして、大まかには、ヤペトの子孫がヨーロッパとロシア圏、黒海とカスピ海周辺のトルコやイラン、やがてインドやアジア等の周辺の広い範囲に広がって行ったと考えることができる。

ヤペテの子孫が果たすもう一つの役割

ヤペテの子孫は特にエゼキエル書の27章、32章、38と39章、また黙示録20章等の終末預言によれば、歴史を通し、そして黙示録に描かれる千年王国に突入する直前のハルマゲドンの戦いと千年王国の末期に神とイスラエルに対してサタンの勢力下で戦いを挑む民族としても登場する。イエスの時代ではギリシャ神話の影響を受けていたローマ帝国に支配されていた。エゼキエル書や黙示録で示唆されているハルマゲドンの戦いでは北の民族、つまりヤペテの民族が戦いを挑むことになっている。千年王国の末期にサタンが底知れぬ穴から解放された時にサタンの側につくのがゴグとマゴグに代表される民だとある(黙示録20章)。つまり、創世記10章の出だしで登場するマゴグとその中心都市となっていくゴグ、すなわちヤペテの長男が最後まで神と神の民に反抗することが預言されている。

ヤペテの子孫はキリスト教の国々と仏教などの国々の元になっている。そして、歴史が示す通りにそれらの国が互いに戦争を繰り返している現実を目の当たりにしている。千年王国の突入前と最後の時に神に逆らう民族は無宗教の人もユダヤ教、キリスト教、イスラム教を含むすべての宗教関係者がその中に含まれる可能性があることが示唆されている。

だからこそ、我々はイエス・キリストが罪人の側に立ち、十字架を背負って下さったように、自分の十字架を担い、常に誤り多き存在であることを自覚しながら謙虚に神のみこころに従う者でありたいと願わされる。今週も互いに励まし合いながら復活の主と共に歩んでいこう。

2025年3月30日(日)  北九州キリスト教会 宣教題
「地上の民族のはじまり①」

礼拝動画はこちらからご覧ください。